安田のはてなブログ

サンフランシスコ・シリコンバレーでの投資活動を通して学んだこと、感じたことを書いてます。

Angel Listのシンジケート

最近、顔見知りの起業家の何人かがパートタイムで、Angel ListのSyndicate(シンジケート)を始めたんだという話を聞いたり、Podcastでも、Angel Listのファウンダー達と他の投資家で始めたMaiden Lane Venture なんかを聞いたりしていて、にわかに関心が高まりちょっとまとめてみました。
 
シンジケートって、組合とか連合とかいう意味で、複数の貸し手を組織して強調融資を行う場合はシンジケートローンなんて言いますね。
 
Angel List のシンジケートとは?
 
Angel Listは、2010年に解説されたスタートアップのデータベースで、スタートアップのプロダクト、創業者、投資家などの情報を一覧でみることができました。そして、2013年9月に、シンジケートの仕組みを構築し、スタートアップが適格投資家(accredited investor)*1からオンラインで投資を受けることができるようになりました。
 
 
スタートアップが、Angel Listのシンジケートを使って資金を調達する場合、シンジケートのリードインベスター(シンジケートリード)を見つける(決める)必要があります。シンジケートリードは、Angel List内で、自分がリードする投資案件への支援を表明している適格投資家(Backer ”バッカー”)に案件を紹介します。バッカー、シンジケートリードからの情報によりは、自分の投資の判断を行います。
 
通常のベンチャーキャピタルの場合は、一旦ベンチャーキャピタルが運営するファンドに投資すると、預けたお金の運用を全てベンチャーキャピタリストに任せているので、個別の案件毎に、パスしたり、案件毎に投資額を増減させることができません。
 
Angel Listシンジケートの場合は、案件毎に自分は投資する・しない、そして投資額も自分で決めらることができます。さらに、特定のVCだけではなくて、いろんなシンジケートリードへの支援を表明することにより、いろんな人からの案件を紹介してもらえます。
 
Angel Listは、各投資家からのお金の回収や投資に関わる契約の締結を全て行ってくれます。また、投資は、スタートアップへの直接投資ではなく、今回の投資のために作られたファンド経由への投資となります。
 
シンジケートリードってどんな人で、彼らのモチベーションは?
 
Angel Listのシンジケートのページでシンジケートの一覧を見ることができます。
 
例えば、Path 創業者Dave Morin、 起業家であり現在はLaunch Fundを運営しているJason Calacaniなど、自分の既存投資先や新たなスタートアップの良い投資案件を引っ張ってこれるネットワークを持っている人が多いですね。
 
また、通常のVCファンドは、ファンドの運用額に対して毎年2%くらいの管理報酬に加えて、20%くらいの成功報酬を受け取ります。成功報酬は、ファンドのリターンとファンドへの投資額の差額のいわば利益となるわけですが、その20%くらいをベンチャーキャピタルが受け取ります。
 
Angel Listの場合は、管理報酬が無く、シンジケートのリードは成功報酬のみ(平均25%)を受け取ります。
 
通常のベンチャーキャピタル同様、投資先のパフォーマンスが上がらないと、バッカーが増えてこない為、スタートアップからのリードの依頼も無くなってきますので、シンジケートリードは、最高のスタートアップを紹介するために奮闘しています。また、シンジケートリードは、平均してシンジケート投資総額の16%を自分もしくは自分の運用するファンド経由で投資をしていますので、自分たちもかなりのリスクを背負って投資してます。
 
スタートアップへのメリット
 
とくに創業間もないスタートアップは資金を集めるために、多くのエンジェル投資家にあって、投資資金を集めなければなりません。もしも、沢山のバッカーを抱える経験あるシンジケートリードがAngel Listでお金を集めてくれるのであれば、効率的です。そして、沢山の投資家がいても、株主名簿にのってくる投資家は、Angel Listの特別ファンドだけですので、株主名簿にもやさしいですね。
 
また、スタートアップによっては、より多くの投資家の目に触れられたり、見込みユーザへリーチする手段となる場合もあるかもしれません。
 
エンジェル投資家へのメリット
 
エンジェル投資家は、いろんなシンジケートリードをフォローすることによって、コミットなしに、様々な案件を見ることができ、自分が気に入ったスタートアップだけに投資をすることができます。
 
適格投資家の敷居は高いですが、こちらの条件を見たいしていればAngel Listでは海外からの投資家も受け入れています。つまり、日本からでもシリコンバレーを中心に世界中のスタートアップへ投資をすることが可能となっています。
 
始まって2年半くらいですが、Angel List シンジケート投資家達は、過去12ヶ月で、約160Mを387のスタートアップへ投資を行いました。(2016年4月10日現在)今後は、これまでのシンジケート経由での投資のパフォーマンスなんかが公開されだすと、もっと注目が集まるかもしれません。
 
オンラインベンチャー投資は、より進化していく可能性がありますので、また続報が書ければと思います。
 

*1:米国における適格投資家は、純資産100万ドル以上、または年収20万ドル(夫婦で30万ドル)と定められている